まだ知らないままで





まだ知らないままで

いつもの朝 いつものホーム
眠そうな街を 風が抜けてく
イヤホン越し 流れる音に
揺られながら 目を閉じていた

誰かのこと 気にするなんて
自分にはまだ 関係ないって
そんなふうに 思っていたのに
あの日から 少し違った

たまたま見えた その横顔が
なぜだろう 離れなくて
知らないままで いたはずなのに
胸の奥が 騒がしくなる

まだ知らないままで いたはずなのに
きみのことばかり 探してしまう
ほんの一瞬の その仕草だけで
世界が少し 変わってしまった

名前も声も まだ知らないのに
どうしてこんなに 気になってるの
いつもの朝が 特別になる
その理由を まだ知らないまま


開いたドア 流れる景色
変わらないはずの 見慣れた時間
なのに今日は 少しだけ
きみを見つけて 安心してる

誰にだって優しいこと
たぶん特別じゃないのにね
俯いてた 小さな子へ
そっと笑った その瞬間

どうでもよかった はずの景色が
色づいて見えてしまう
気づかないふり してみたって
心だけが 先に向かうの

まだ知らないままで いるふたりが
同じ朝の中 すれ違ってる
近づきたいとか そんな言葉じゃ
まだうまく 説明できない

ただ会えた日は 少し嬉しくて
会えない朝には 少し寂しい
こんな気持ちに なる理由を
わたしはまだ 知らないまま

ひと駅ごとに 近づく景色
なのに心は 追いつけなくて
このままでいい そう思うたび
またきみを 目で追ってしまう

まだ知らないままで いたかったのに
きみを見つけると 嬉しくなるの
たったそれだけの ことなのに
昨日よりも 苦しくなる

名前も声も まだ知らないまま
それでもきっと 惹かれてしまう
変わらない朝が 続けばいいと
初めて願ってしまった

まだ知らないままで

いられないまま――